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消毒用アルコールの発火点は?消毒用エタノールの引火点と保管方法!直射日光は?取り扱いの注意は?

消毒用アルコールの発火点ライフ

新型コロナウイルスの感染拡大防止のため、消毒用アルコール(消毒用エタノールなど)が活用されています。消毒用アルコールは、使用するとすぐに揮発し、拭き取る必要がなく、高い消毒効果が発揮されますので非常に便利です。

しかし、消防法上の危険物に該当し、火災予防のための注意が必要です。そのため「消毒用アルコール(エタノール)の発火点は?」という質問をよく聞きます。確かに発火点もあるのですが、通常、注意すべきは引火点です。

少々ややこしいので以下に解説します。

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消毒用アルコールの発火点は?

一般向けの消毒用アルコールは、エタノールと精製水から作られています。酒税法の適用から外すためにイソプロパノール(イソプロピルアルコール)を少量添加したものもあります。詳しくは、こちらの記事をご覧ください。

ここでは話をわかりやすくするために、エタノールと精製水から作られている消毒用アルコール(=消毒用エタノール)について説明します。

純粋なエタノール(濃度100vol%)の発火点は384℃です。精製水とエタノールを混合した場合、その比率で発火点は変わります。濃度60vol%で431℃です。消毒用エタノールでは、エタノール濃度が76.9〜81.4vol%に調製されていますので、発火点はこれらの間の温度となり、おおよそ400℃と考えておけばよいでしょう。

ここで理解を深めるために発火点について簡単に説明します。

通常、発火点は、空気中で加熱し、温度を上げていった時に自ら発火する限界温度のことを意味します。「空気中」としてるのは周囲に酸素があることを意味しています。昇温速度やその物質の周囲の酸素濃度などにも影響を受けます。

発火と引火との大きな違いは、周囲に火気が無くても空気があれば火がつくという点です。消防法では、危険物をその性質によっていくつかの「類」に分類しています。空気中で自然に発火する危険があるものは、「第三類」に分類されており、「自然発火性物質」などと呼ばれています。

火がつくと非常に危険なガソリンも、「第三類」ではなく、消毒用エタノールと同じ「第四類」の「引火性液体」です。ガソリンの発火点は約300℃で、消毒用エタノールよりも100℃も低いです。それでも通常の温度で引火しやすく、引火すると非常に危険であることを周知することが大切です。また密栓し、冷暗所保存等のルールを守れば、通常の条件下で空気中・300℃以上になることは考えにくいため、「引火性液体」として厳重に保管するように定められています。

消毒用エタノールについても同様です。しかし、物質の性質を把握し、正しく安全な保管・取り扱いをするという点では、発火点を知っておくことは望ましいでしょう。

消毒用エタノールIPとは?

消毒用アルコールは、大別するとイソプロパノールを添加したものと添加していないものに分けられます。添加したものは「消毒用エタノールIP」という規格になります。

なぜイソプロパノールを添加するかというと、エタノールより毒性の高いイソプロパノールを添加することで飲めないようにして酒税法の対象から外し、価格を下げるためです。

したがって、イソプロパノールが添加してある消毒用エタノールは、主成分がエタノールであっても飲めませんし、飲んだ場合にその毒性によって有害ですので飲んではいけません。

一方、イソプロパノールを添加していない消毒用エタノールは、酒税法の対象となり、「消毒用エタノールIP」と比べて非常に高価です。第3類医薬品として、500mlで4000円以上の価格で販売されていますので、普通にお酒を買った方が断然安いですし、美味しいです。そもそも飲用でない消毒用のエタノールを高いお金を払って飲む必要はありません。

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消毒用エタノールの引火点は?

消毒用エタノールの引火点は21℃以下です。エタノール濃度が高くなるほど引火点は下がり、100vol%では約13℃です。基本的には通常の生活をしている温度では引火する危険性があると認識しておく方が望ましいです。

エタノールの引火点がなぜ濃度によって変わるのでしょうか?それは引火という現象は、直接液体に火が付くのではなく、液体表面から揮発する蒸気に火が付く現象だからです。

水もエタノールも、液体表面から蒸気が出ています。それは液体の表面から水とエタノールの分子が空気中に出ていることを意味します。その時の蒸気の量は液体の温度により変わり、温度が高くなるほど蒸気がたくさん出ることは感覚的にも理解できます。そして液面のすぐ上の空気中においてエタノールの濃度がある条件を超えると火が付きます。この時の液体の温度が引火点になります。

理科の実験でアルコールランプなどに着火するときも、芯に火を付けようとするのではなく、蒸気に火を火を付けようとすることがポイントです。この性質は、アルコールをこぼしてしまい、そこに引火した時の状況を見ると危険性が高いことがわかります。

透明な液体が水のように広がり、その液面全体に炎が広がってしまうからです。さらにアルコールに引火した火はほぼ透明でよく見えず、火が付いたことに気が付くことが遅れやすいということも特徴です。取り扱いには十分に注意しましょう。

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消毒用エタノールの安全な保管方法と消火について!直射日光は?

消毒用エタノールの性質について述べました。これらのことから考えて、消毒用エタノールの安全な保管方法は、しっかりと蓋を閉め、冷暗所に保管するということになります。冷暗所というのは、冷蔵庫の中という意味ではなく、直射日光などが当たらず、常温以上に温度が上昇しない場所です。

取り扱い時は火気厳禁です。通常の環境下であれば発火しませんので、近くに火気がなければ着火しません。

消毒用エタノールは、シンプルな液状のものが容器に詰められたものやジェル状のものなど、いくつかのタイプがあります。

以下の写真の消毒用エタノールは、「第3類医薬品」として使用されているもっともシンプルなタイプです。この商品の販売ページには、「直射日光の当たらない涼しい所に密栓して保管すること」と記載されています。


このような保管方法についての記載が無いような商品でも、消毒用エタノールとしての規格を満たすものであれば、基本的には同じです。

なぜ「直射日光の当たらない涼しい所に密栓して保管すること」という保管方法になるのでしょうか?

消毒用エタノールに直射日光がNGなのは濃度が関係

日本薬局方によれば、消毒用エタノール(消毒用アルコール)は、15℃でエタノールを76.9〜81.4vol%含むものと規格が定められています。

「vol%」とは体積の比率で表した時のパーセンテージです。エタノールや水などの液体は、温度によって体積が大きく変化しますので、温度も定められています。

その点、重量の比率で表した「wt%」ならば、温度が変わっても重量が変化しませんので、もう少し理解しやすいです。

76.9〜81.4vol%は、約70wt%〜約75.2%に相当します。ほとんどの液状の混合物の成分を表す時に、「%」と書かれていれば一般的には重量濃度のことで、「wt%」と同じです。しかし、消毒用エタノールの場合は、「vol%」で規格を定めていますので、単純に「%」で記載すると体積濃度なのか重量濃度なのか分かりにくく混乱します。

消毒用エタノールのことを正しく理解している販売サイトならば、正確に記載していることが多いので、そのようなサイトを選んで購入した方が良いでしょう。

少し濃度について詳しく書きました。どうしてもこの点を正確にお伝えしないといけませんので、細かな話になりましたがご容赦ください。

もっとも重要なことは、エタノール濃度が60wt%(重量%と書くこともあります)以上になると、消防法上の危険物に該当します。つまり、消毒用エタノールは、危険物で、正確には「危険物第四類 アルコール類」です。「危険物第4類」とは、「引火性液体」と言われる性質のもので、文字通り、火が付きやすい液体のことです。

エタノール濃度が70wt%では、引火点は21℃です。エタノールの濃度が高くなるほど引火点は低くなり、80wt%で引火点は20℃です。引火点とは、近くに火があった時に引火する温度です。これは液体の表面から蒸気として揮発するエタノールの量が、エタノールの温度によって変わり、温度が高くなるほどたくさんエタノールが気化して火が付きやすくなると考えれば良いでしょう。

ちなみに火を近づけて、その熱によって液状の消毒用エタノールが加熱されてしまえば温度が上昇しますので、引火しやすくなります。また「引火」とは火を近づけた時に火が付くことを意味します。火が無い条件下で自ら発火するわけではありません。

また詳しく、少々ややこしくなってしまいましたが、要するに直射日光が当たるようなところに保管すると、日光によって温められ、引火しやすい状況になるために「直射日光の当たらない涼しい所に密栓して保管すること」とされています。

例えば、真夏に自動車のダッシュボード付近がどのぐらいの暑さになるかご存知でしょうか?日光の強さ、放置時間、車種などにもよりますが、70℃以上になることは珍しくありません。そのような条件下では、飲み物が入っているペットボトルでさえ破裂することが知られています。最近は、最高気温が35℃を越えることも珍しくなく、窓越しに直射日光が当たり、風通しが悪ければかなり高温になることもありますので、「直射日光の当たらない涼しい所に密栓して保管すること」としているわけです。

エアコンは外気温が高くなると効きにくくなることについてこちらの記事で紹介しています。

消毒用エタノールの取り扱いの注意は?消火方法は?

ここでは医学的な観点からの消毒用エタノールの取り扱いの注意点ではなく、前述の危険物としての取り扱いに関する視点での注意点を解説します。医学的な注意点については、商品に添付の説明をご覧ください。

基本的には「直射日光の当たらない涼しい所に密栓して保管すること」という注意を守っていれば大丈夫なのですが、それほど頻繁に使っていなければ、冬の気温が低い時期に使用し、蓋をしっかり閉めて、猛暑の夏に再び使用するということがあるかもしれません。

例えば冬に閉めた時の温度が10℃ぐらいで、夏に再び蓋を開ける時の温度が35℃以上であることもあるかもしれません。そんな時に考えられるのは、蓋を少し開けた時に中のエタノールが「プシュー」と吹き出す可能性です。またその他の理由により、蓋を閉めた時よりも中身が温められてしまうと、同様に吹き出す可能性があるかもしれません。

これはエタノールが揮発しやすいためです。そもそも手指を消毒するためのものですので、蓋を開けようとした手に吹き出したエタノールが付いても問題はありません。少なくとも開けようとする蓋に顔を近づけなければ、身体のそれ以外の場所についても問題ないでしょう。

絶対に注意しなければならないことは、「火気厳禁」ということです。例えば、換気の悪い部屋で、ガスコンロなどを付けた状態でエタノールが吹き出したりすると引火する可能性があります。

また消毒用エタノールで手指を消毒し、その後にその手でタバコを吸うと引火する可能性があります。以下は、東京消防庁によるデモンストレーションビデオです。これを観れば、如何に引火しやすいか確認できます。

*リンクは東京消防庁報道発表資料(https://www.tfd.metro.tokyo.lg.jp/hp-kouhouka/pdf/020417-2.pdf)より。

さらにやっかいなことに、エタノールに印加しても、炎の色がほぼ無色(淡青白色)で、よく見えないという特徴があります。つまり、一旦、火が付いてそれを消しても、炎が見えないので、消したと思っても実は消えていなかったということがあります。

万が一の着火してしまった場合の消火方法として、水をかけることは必ずしも効果を発揮しない可能性が高いです。比重が水より小さいので、水面に火が付いたまま広がってしまう可能性があるからです(*エタノールの量が非常に少なく、大量の水が使える場合は有効な場合もあります)。通常は、アルコール消火用の粉末消火器などにより、酸素を遮断する方法がとられます。

このようにいろいろと書くと心配になってしまうかもしれませんが、「直射日光の当たらない涼しい所に密栓して保管すること」と「火気厳禁」ということを守り、使用する時だけ蓋を開け、すぐに蓋を閉めるようにすれば通常は問題なく使用できるはずです。

まとめ

消毒用アルコール(消毒用エタノール)の発火点と引火点、保管方法、取り扱いの注意点について紹介しました。ほとんどの人には関係ありませんが、消毒用エタノールは「危険物第四類 アルコール類」(引火性液体)ですので、80リットル以上を保管する場合は、消防署に届出が必要です。

▼▼アルコールと界面活性剤による消毒についてはこちら▼▼

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